拒まれてるって、わかってる。

「好きだ」って、「愛してる」っていくら叫んでも、お前の心に届かないってわかってる。

だけど、俺は手を差し伸べ続ける。

たとえお前が望まなくとも。




なんだか眠れなくて、宿舎の廊下で風に当たろうと外に出た。

空はよく晴れていて、月明かりが気持ちいい。

とても静かな夜。

こんな夜に会えたら、どれだけ幸せなことだろうと思って、アイツの部屋に向かって歩き出した。


「あ…」


見つけた。

部屋に行くより早く、アイツを見つけた。

同じように、風に当たっていたのだろうか?


「よぉ、りょうと…っ!?」

「あぁ…あんたか…」


凌統は笑って言ったけど、頬には涙の痕があった。

その瞬間気づいてしまった。

明日は…もぉ今日か…は、親父さんの命日だ。

マズッた。

一番会いたくない相手に会ってしまった、とあいつは思っただろう。


俺が凌統の親父さんを殺し、呉に降ってから、どれだけの年月が経っただろう。

でも、いつまで経っても、あいつから親父さんのことが消えるわけはなくて、

俺を憎む気持ちは、最近減ってはきただろうケド、なくなるわけじゃない。

それを承知で、俺は凌統の傍にいる。

いくら憎まれても構わない。

どれだけ殺されようとも、離れることができない。

それだけ、俺は凌統を大切に思っていた。

でも…だけど、どんなに俺が大切に思うおうが、凌統を救うことはできない。

現に、今日も1人で泣いてたんだ。


「あんたらしくないね、俺を見て黙っちゃうなんてさ」

「あ…」

「らしく、ないねぇ…」


笑っている、ように見えた。

でも、違う。

哀しみを隠した笑顔は、俺をひどく寂しい気持ちにさせた。

思わず抱きしめて、口づける。


「凌統…好きだ」

いきなりのことに驚いた表情を見せた凌統は、次の瞬間にはやわらかく笑った。

それだけだった。

今、誰よりもそばにいるのに…顔を近づければ、唇に触れられる…こんなにも近くにいるのに…

抱きしめても、口づけても、お前の心には届かないんだ。


「俺が、いるから…」

「かんね…?」

「おめぇが呼べば…いや、呼ばなくても…俺はいつでも傍にいるから、1人で泣くんじゃねぇ…」


こんなこと言われるの、お前は嫌に決まってる。

わかってるけど、言わずにはいられない。

俺はお前を守りたいし、救いたいんだ。

たとえそれが、元凶が俺だとしても。


「その言葉だけ、ありがたく頂いておくよ」


とんっ、と軽く体を突き放された。

力が入らなくて、少しだけよろけた。


「凌統…」

「ふ、ぁ…あんたのバカ面見たら眠くなってきたよ。じゃぁね、おやすみさん」


軽く手を振って、凌統は戻っていった。

俺も手を振り返す。

見えなくなると、その手を強く握り締めた。


すごく、もどかしい。

すぐ傍にいるのに、本当のあいつを見れないのが。

すぐ傍にいるのに、俺の思いが届かないのが。


この手がいつの日か、本当のあいつを抱けたらいい。


「諦めねぇぜ…、いつか…」


あいつが望まないとしても、差し伸べ続ける。

もしも、あいつの手を掴んだら、二度と離してなんかやるものか。




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『ねつこい』…しつこい。淡白でない。ねつい。

本来の意味は↑(ひらがな)です。
『熱恋』は当て字です。
ジャンヌダルクの『Love is Here』がイメージソングです。
これと、以前書いた『グレイシャルLOVE』が1・2を争う甘凌イメージソングです!

いくら思っても願っても、本当の心には響かない。

それでも諦めない甘寧が私は大好きですv